医療機関は診療の増加に対応するために、効率的な運営が求められています。医師事務作業補助者が医師の事務作業をサポートすることで、医師は診療に集中でき、より多くの患者を診察することが可能になります。
診療記録の管理や医療保険の請求業務など、医師が自ら行うには時間と労力がかかる作業が増えています。医師事務作業補助者は、こうした専門的な事務作業を担うことで、医師が本来の診療業務に専念できるようサポートします。
医師事務作業補助者は、「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」という通知が元になり、翌年、医師事務作業補助者が新設されました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025aq3-att/2r98520000025axw.pdf
医師の働き方改革も施行されましたので、医師事務作業補助者の需要は非常に高くなっています。また医師事務作業者の配置に関する加算も診療報酬改定の度に連続して引き上げられている状況です。
医師事務作業補助者の役割
医師事務作業補助者（医療クラークとも呼ばれる）は、医師の負担を軽減するために、診療所や病院で医師の事務作業をサポートする専門職です。主な役割は以下の通りです：
- 診療録の作成・整理：診療記録やカルテの作成、整理、保管を行います。これにより、医師は診療に集中することができます。
- 各種書類作成：診断書、紹介状、検査依頼書などの作成を補助します。
- 電子カルテの入力：診察内容や検査結果を電子カルテに入力します。
- スケジュール管理：医師の診察スケジュールや会議、研修の予定管理を行います。
- その他の事務作業：患者の予約管理、電話応対、来客対応などの一般事務作業も担当します。
資格と必要なスキル
医師事務作業補助者になるためには、特定の国家資格は必要ありませんが、医療機関での実務に直結する知識とスキルを習得するために、以下のような資格取得や教育が推奨されます。
- 医師事務作業補助技能認定：これは民間の資格で、医師事務作業補助者としての基本的な知識と技術を証明するものです。この資格を取得することで、就職や転職に有利になります。
- 医療事務関連の資格：医療事務関連の資格（例：医療事務管理士、診療報酬請求事務能力認定試験など）も有用です。また、ドクターズクラークという資格もあり、医療現場で必要な知識を幅広くカバーしています。
医師事務作業補助者に必要なスキルは以下となります。
- コミュニケーション能力：医師や看護師、患者と円滑にコミュニケーションを取る能力が求められます。
- コンピュータスキル：電子カルテの入力や各種書類の作成に必要な基本的なコンピュータ操作ができること。
- 医療知識：医療用語や基本的な医療知識を理解していることが重要です。
資格：一般財団法人日本医療教育財団・公益社団法人全日本病院協会主催
医師事務作業補助技能認定試験（ドクターズクラーク®）
→ 試験詳細はこちらから
※ 試験は、年6回（5月、7月、9月、11月、1月、3月）
待遇
医師事務作業補助者の待遇は、勤務先や経験、資格の有無によって異なります。以下に一般的な待遇の例を挙げます。
- 給与：初任給は月額約18万円～22万円程度が一般的です。経験やスキルに応じて給与は上昇します。また、特定の資格を持っている場合は、資格手当が付くこともあります。
- 勤務時間：一般的にはシフト制で、8時間勤務が多いです。病院によっては、夜勤や休日勤務が必要な場合もあります。
- 福利厚生：社会保険完備、交通費支給、制服貸与、研修制度などが整っていることが多いです。また、正社員として雇用される場合、賞与や昇給も期待できます。
働き方
医師事務作業補助者の働き方は、勤務先や個人の状況により多様です。以下に一般的な働き方の例を示します。
- 病院勤務：大規模病院では、多くの医師事務作業補助者が働いており、専門分野に応じたサポートを行います。チームで業務を分担し、効率的に医師のサポートを行います。
- 診療所勤務：中小規模の診療所では、より広範な業務を担当することが多いです。個人の能力に応じて、柔軟に業務をこなすことが求められます。
- 在宅医療での活躍：メディカルアシスタントや医療クラークと言われ、訪問診療で活躍している医師事務作業補助者は数多くいます。カルテ代行入力や書類作成代行などを行っています。
キャリアパス
医師事務作業補助者としての経験を積むことで、以下のようなキャリアパスが開けます。
- 医療事務スペシャリスト：医療事務の専門知識を深め、より高度な事務作業や管理業務を担当することができます。
- 管理職：チームリーダーや管理職として、医師事務作業補助者全体の管理や教育を担当するポジションに昇進することも可能です。
- 他の医療関連職種：医療秘書や診療情報管理士など、他の医療関連職種へのキャリアチェンジも考えられます。
今後の展望とまとめ
医師事務作業補助者の需要が増えている理由は、高齢化社会の進展、医療の高度化と専門化、電子カルテの普及、仕事の効率化と質の向上、医師の働き方改革、そしてチーム医療の推進など、多岐にわたります。これらの要因が相互に関連し合い、医療現場における医師事務作業補助者の重要性が高まっています。医療機関においては、彼らの存在が欠かせないものとなっており、今後もその需要は増え続けると予想されます。
