診療放射線技師の需要と供給、及び転職についての考察は、現代の医療環境における技術進歩と人口動態の変化を反映しています。診療放射線技師は、放射線診断および治療に不可欠な役割を果たしており、その需要は増加傾向にあります。以下、その背景と現状、そして転職に関する考察を示します。
まず、診療放射線技師の就職状況としては、ある程度飽和状態です。需要があるという見方もあるのですが、どちらかと言えば、退職者等の補充が主となります。
業務は医療機器の高度化と精密化に伴い、CTスキャンやMRIなどの先端的な画像診断技術が普及しています。また、予防医学の分野でもマンモグラフィーの採用により、医療現場での放射線技師の役割が重要視されています。がん治療においては、放射線治療の技術も進化しており、個別化治療や新しい放射線治療の分野で放射線技師の需要が増加しています。
また、タスクシフト/シェアに関しても、他のコメディカル同様に令和3年7月9日、医政発0709第7号「臨床検査技師等に関する法律施行令の一部を改正する政令等の公布について」が厚生労働省医政局長より発出され、研修受講が条件下で業務拡大に至ってます。一部で言うと、CT分野などでは、造影剤注入のために脈路を確保する行為が追加されるなどが追加されています。
高齢化社会の進行に伴い、医療の需要は全般的に増加しています。特に、高齢者に多い疾患、例えばがんや心血管疾患の診断および治療において、患部の撮影や治療という分野での活躍が増えており、放射線技師の役割が不可欠となっています。加えて、医療機関の集約化や地域医療の充実が図られる中で、地域ごとに専門性の高い放射線技師の確保が求められています。
供給側の状況としては、放射線技師の教育機関は全国に点在し、一定数の卒業生を毎年輩出しています。現在では、養成校の7割が大学となり、高度教育を受けた診療放射線技師の供給が主となっています。地域によっては技師の数が不足しており、都市部と地方の供給バランスに課題が残っています。
国家試験の合格者からみると、毎年大体2,500名以上が合格している傾向になっています。
転職について考察すると、診療放射線技師にとっての転職市場は比較的飽和状態です。退職・定年者の補充が主となっています。専門技術や特定の診療分野に精通した技師など、業務を指定した募集が多い傾向にあります。また、若干ではありますが、マンモグラフィーのように女性に限定して募集している求人もあります。男女均等と言いながらも、セクハラ対策の一環として性別指定もあります。また、企業の求人もありますが、主に営業職となります。
転職を考える際の主な動機には、キャリアアップや給与改善、労働環境の改善、さらには専門知識の習得や新たなチャレンジを求めることが挙げられます。キャリアアップの視点から見れば、臨床放射線技師としての経験を積むことで、管理職や教育者、研究者としての道も開けます。
特に、高度な専門技術を持つ技師は、大学病院や専門クリニックでの活躍が期待されます。また、地域医療に貢献することを目的とした地方への転職も一つの選択肢です。地方では医療人材の確保が困難なところもあるため、専門技術を持つ放射線技師が歓迎される傾向がありますが、窓口は非常に少ないと考えます。やはり、就職先が限られていることから、離職が少ないという理由が一番です。
給与改善や労働環境の改善を求める転職も多く見られます。診療放射線技師の給与は、勤続年数や役職によって異なりますが、都市部の大病院では比較的高水準です。一方、地方の中小病院では給与水準が低いことがあり、これが若手技師の流出を招く要因となっています。地域差で、10万円近く給料が異なるという研究発表もあります。
※日本診療放射線技師会より
https://www.jart.jp/docs/2019-01_paper.pdf
また、夜勤や休日出勤が多い職場では、労働環境の改善を求める技師が増えており、ワークライフバランスを主とした転職を考える方も多くなっています。
専門知識の習得や新たなチャレンジを求める転職も重要な動機です。医療技術の進歩に伴い、新しい診断技術や治療法が次々と導入されているため、技師も常に最新の知識と技術を学び続ける必要があります。そのため、専門分野を深めるために転職を選ぶ技師も多く、特定の診療科に特化したクリニックや研究機関での勤務を希望するケースが増えています。
さらに、転職に際しては自己研鑽と資格取得が重要な要素です。放射線技師には多くの専門資格が存在し、これらを取得することでキャリアの幅が広がります。例えば、放射線治療専門技師や核医学専門技師などの資格は、高度な専門知識を証明するものとして評価されます。これらの資格を持つ技師は、転職市場での競争力が高く、希望する職場への転職が優位になる可能性はあります。