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臨床工学技士の需要と供給、転職についての考察

国家資格別

臨床工学技士は、1987年に国家資格として誕生した医療資格としては比較的新しい職域である。2020年の国家試験終了時点で、累計の合格者は47,911人となり、比較的少ない印象がある。

全国で臨床工学技士として働いている人数は、30,000人を上回り、需要は増えているように見える。
受験者数2,600名に対し、合格者数が2,000名ということから、大体毎年この数の供給があると言えるだろう。臨床検査技師は、年4,000名排出と考えれば、その半分程度なので、まだ可能性は十分ある資格ではないかと考察出来る。

https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2024/siken17-2/about.html

臨床工学技士の業務として、学生から人気があるのが心臓の手術に入る人工心肺操作業務です。しかしながら中々狭き門である。求人、就職先の大半が人工透析に関わる業務となっており、理想と現実のギャップも存在している。

医療機関、特に中小以上の病院ではMEセンター、CE部門等と言われる専門部署が今では存在するようになってきた。院内の医療機器全般を管理する部門であり、機器のメンテナンスを中心に業務を行っているところもある。このような部門を備えている医療機関もそれなりの規模を有するところに限定されるのではないだろうか。

臨床工学技士は、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とする医療機器の専門医療職種である。近年では、病院にもよるが、ペースメーカーチェックや人工呼吸器の操作なども含まれ、活躍の幅が増えている。

比較的新しい職域であるとお伝えしたが、養成校も増え続けており、需要と供給のバランスは崩れつつある。やはり、ある程度の人員数が決まっており、退職などで空かない限り中々求人はない。

人工透析などの職域は、看護師不足に対応する為、看護師の代わりに技士を採用するクリニックなどはある。看護は出来なくとも、技士は患者への穿刺が出来るので、透析室需要は今後もあると考える。

手術業務は、自己血回収システム(セルセーバー)や麻酔器のメンテナンス、人工心肺業務などがある。正直、手術室での資格を使った業務需要があるとは言われるものの、そこまで多い業務かと言われれば、そこまで多くはない印象である。手術の準備等、手術室全般業務を考えると、資格範囲以外の準備や後かたずけなど付帯業務をするならば、看護師や看護補助者の代わりとなり、需要は大きい。心臓の手術も人工心肺を使わない手術も増え始めており、時代の流れと共に人工心肺を使った手術数は減少してきているはず。

半面で、人工呼吸器を管理するような術後管理、また集中治療室での血液浄化業務などは変わらず需要はあると考えている。集中治療室に臨床工学技士が配属されていることも珍しくはない。

ただし、こちらも需要が年々増えるということではなく、一定数の需要に限られていると考える。特に大きな病院であればあるほど、需要はある。ちなみに筆者もこの資格を有し、かつては、この資格で飯を食っていた。それもこの資格での過渡期を過ごした。業務範囲を確立したり、知名度を広げたりしながら、様々な可能性を探していた時期もある。

年に2,000名も送り出している資格であるからには、需要と供給のバランスは崩れかけており、転職や就職のチャンスは限られているものと考える。地方では需要は少なく、都心部の方が多いということは間違いないだろう。その大半は人工透析業務となるはず。給料も地方が少なく、都心部の方が高いと思われる。

医療機器に強い資格であるからというわけではないが、医療機器メーカーなどにも就職の窓口はある。同僚は、人工心肺の営業をしていたり、後輩だと、人工心臓を作る会社へ転職した者もいた。人にもよるが、医療機器関係の就職の幅は広いと思われる。医療機関に限らなければ、様々な可能性を秘めた資格であるということは間違いない。

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転職前に学んでおいて欲しい事

自身が臨床工学技士と長年働いてきましたので、同じ資格を持つものに対しては非常に厳しい目線で接します。中でも転職を考える場合の一般的な常識は心得ておく必要はあります。何をやってきたか=過去の経験、これから何をやりたいのか=未来への希望、は絶対に確認します。
臨床工学技士ですので、医療機器を介したアプローチは当然だと思っていますが、医療機器を前面に出さない、医療機器を介して何を学んできたかを伝えて頂きたいと望んでいます。特に以下の5つを重要視します。

  1. 医療機器の知識: 臨床工学技士として様々な医療機器の操作や保守、修理などを担当してきているでしょう。今まで、あなたが経験してきた技術や経験を言葉で表現する必要がありますが、下記のような表現は避けて頂きたいと思っています。

    ・ ●●年間、透析を行っていました。人工心肺を回していました。
    ・ ●●という機械を使っていました。メンテナンスしてきました。

    技士の面接で、自身の経験を上記のように伝えようとする人が非常に多いというのが、面接官としての感想です。

    転職者に求めていることの中には、即戦力ということも有るので、不要な情報かと言われれば、確かに必要な情報かもしれません。しかし、貴方が培った医療機器の知識や経験を伝えるには、もっと違ったアプローチがあると考えます。
    私だったら、

    ・ 医療機器を介して、どんな分野に興味を持ち、どんな研究や勉強をしてきたか

    を伝えますし、少なくとも面接官が興味を示すような経験の話し方をします。医療機器の知識は、臨床工学技士として必要な事です。しかし、医療機器への興味を伝えてもあまり意味がありません。あなたは自身を売る為には、医療機器というツールを介して何を学んできたかを伝えるべきだと考えます。
  2. 安全規制と法律知識: 医療機器の使用や保守には厳格な安全規制や法律があります。これらの規制や法律に関する基本的な知識を身につけ、適切に行動することが求められます。近年、臨床工学技士の法律違反が非常に目立ち、ニュースにまで発展しています。安全規制、法律の知識は転職前に復習しておく必要があります。
    面接で聞くことはありませんが、一般常識として持ち合わせて頂きたいスキルの一つです。
  3. コミュニケーションスキル: 臨床工学技士は、様々な分野に出向きますので、医療チームや患者とのコミュニケーションが欠かせない職業です。
    日常的に患者や医療スタッフと円滑にコミュニケーションを取り、問題解決や情報共有ができる能力が求められる中、あなたが何を意識し、どのようなコミュニケーションを図っているのかを言葉で伝える必要があります。
    転職希望者のコミュニケーションスキルと既存職員との相性は非常に気にします。転職者の性格やコミュニケーションスキルを今の組織に想像でマッチングさせ、成立するか否かを検討し、採用・不採用を決める事も数多くあります。そのくらい重要視します。日常からコミュニケーションは意識するべきだと思っています。
  4. 専門的なスキルと資格: 転職先の職種や業界によって求められるスキルや資格が異なりますが、特定の専門分野に関するスキルや認定資格を持っていることが有利かもしれません。
    認定資格はある意味、認定資格でしかないと私は理解しているのですが、他の多くの面接官は私とは違った価値観だと思っています。
    特定のスキル、又は、認定資格などは、自己の興味と学びを形に出来る表現方法のひとつです。私もいくつか認定資格を持っていましたが、更新料や費用対効果を考えて、全て手放しました。認定資格は認定資格でしかないとも学びました。
    しかし、転職する際には、持ち合わせていると自己の努力や興味を表現しやすく、確かに有効なのかもしれません。
  5. マネジメントスキルの有無:あまり意識して面接する医療機関は少ないと思いますが、私は重要視します。マネジメントスキルは、後輩育成などにも確実に役に立つスキルですので、学んできたか否かで将来、私の医療機関にもたらす恩恵を考えれば、欠かせないスキルのひとつです。
    正直に言うと、私は、後輩育成できないような先輩技士は不要と考えています。だいたい40歳を越したら、自身のスキルアップより、組織や後輩を中心に物事を考えて頂けるような考えを持った人が好きです。きっとこのような方は、視野も広く、考え方も合理的なのだと思っています。
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