訪問看護ステーションは、自宅で療養する患者に対して看護サービスを提供する施設です。訪問看護ステーションで働く職種には様々なものがあり、それぞれに特有の役割と責任があります。また、働く上で良い点、悪い点、そして将来展望についても理解しておくことが重要です。以下に、これらのポイントを詳しく解説します。
訪問看護ステーションで働ける職種
看護師
訪問看護ステーションから訪問する看護師(訪問看護師と略)は、患者の自宅を訪問して医療処置や健康管理を行います。チーム看護ではなく、多くは受け持ちを持った担当制となります。オンコール体制もありますので、情報の共有は徹底されます。主な業務内容は以下の通りです。
医療処置
- 注射・点滴:患者の状態に応じて、必要な注射や点滴を行います。
- カテーテル管理:尿道カテーテルや胃ろうなどの管理を行い、感染予防やトラブル対応を行います。
- 傷の処置:褥瘡(床ずれ)や手術後の傷などの処置を行い、感染防止や治癒を促進します。
- 人工呼吸器の管理:在宅で人工呼吸器を使用している患者の機器管理やトラブル対応を行います。
服薬管理
患者の服薬状況を確認し、薬の正しい服用方法や副作用について説明します。必要に応じて、薬の仕分けや服薬カレンダーの作成を行います。
リハビリテーション支援
理学療法士や作業療法士と連携して、患者のリハビリテーションプランを実施します。具体的には、歩行訓練や関節の運動、日常生活動作の訓練などが含まれます。
生活環境の整備
患者が安全に生活できるよう、住環境の整備や福祉用具の導入についてアドバイスします。これは、手すりの設置や段差の解消、適切なベッドや車椅子の選定などが含まれます。
教育と支援
- 病状説明:患者や家族に対して、病気や治療法について分かりやすく説明します。
- ケア方法の指導:家族が日常的に行うケアの方法や、緊急時の対応について教育します。
- 心理的サポート:患者や家族の精神的な負担を軽減するために、話を聞いたりアドバイスを行ったりします。
多職種連携
定期的に開催される多職種連携会議に参加し、患者のケアプランについて情報共有や意見交換を行います。また、医師や他の専門職と連絡を取り合い、必要な情報を提供します。
理学療法士 (PT)・作業療法士 (OT)
訪問看護ステーションにおける理学療法士 (PT) と作業療法士 (OT) は、在宅療養を希望する患者に対してリハビリテーションサービスを提供し、患者の機能回復や維持、生活の質の向上を目指して重要な役割を果たしています。彼らの業務は身体機能の評価やリハビリテーションプランの作成と実施、患者や家族への教育、生活環境の整備、多職種連携など多岐にわたります。
- リハビリプランの作成と実施
- 日常生活動作 (ADL) の訓練
- 患者と家族へのリハビリ指導
言語聴覚士 (ST)
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist, ST)は、在宅療養を希望する患者に対して、言語、音声、コミュニケーション、嚥下機能の評価と訓練を提供する専門職です。彼らは、主に高齢者や障害を持つ人々、脳卒中などで言語や嚥下機能に障害がある患者を支援します。
- 言語訓練
- 嚥下機能の改善訓練
- 患者と家族へのコミュニケーション方法の指導
介護支援相談員(ケアマネージャー)
通称ケアマネと呼びますが、訪問看護ステーションも機能強化型の上位を取得していく条件で、居宅介護支援事業所を同一敷地内に設置する条件となっています。機能強化型取得を目指すステーションが増えていますので、主任ケアマネ(ケアマネの上位)の採用が増えています。他にも訪問看護ステーションを活発化させる意味でも居宅介護事業所の併設を模索しているところも多いです。
- アセスメントの実施
- ケアプランの作成と見直し
- サービス提供の調整
- モニタリングとフィードバック
- 介護保険の手続き支援
訪問看護ステーションで働くメリット
1. 患者との密な関わり
訪問看護では、患者の自宅でケアを提供するため、患者やその家族との密な関係を築くことができます。自宅に行って看護を行うという面から、患者との距離感がより身近になり、やりがいを感じる看護師も多い業界です。訪問診療医との付き合いも増えますし、介護業界との関りも強くなります。
2. 自律性と裁量の高さ
訪問看護では、看護師やセラピストが自分の裁量でケアプランを実施することが多いため、自己決定権が高く、自律的に働くことができます。しかし、個の能力差が出やすくなりますので、経験と学びがより一層大切な世界です。
3. 幅広いスキルの習得
訪問看護では、さまざまな患者の状態や背景に対応するため、幅広い看護技術や知識を習得することができます。これにより、総合的な看護スキルが向上します。
4. ワークライフバランスの向上
訪問看護ステーションでは、勤務時間が比較的規則的であり、夜勤が少ないため、ワークライフバランスが取りやすい環境です。家庭との両立を図りやすいのも大きなメリットです。
訪問看護ステーションで働くデメリット
1. 移動の負担
訪問看護師は、一日に複数の患者の自宅を訪問するため、移動が多くなります。移動時間や交通の状況によっては、負担が増えることがあります。自転車での移動、車での移動、徒歩での移動と場所により異なります。
2. 緊急対応の難しさ
訪問先で急変する患者に対して、病院のような即時の医療対応が難しいことがあります。適切な判断と緊急時の対応スキルが求められます。現在は、24時間対応が当たり前となってきていますので、オンコールが難しい看護師は、就職先が狭まる可能性があります。逆にオンコールが出来る看護師は、喜ばれるでしょう。看取りの他にも呼吸苦などでコールが来る可能性がありますが、主治医がいますので、主治医と連携してケアを行うようになります。
3. 孤立感
訪問看護は個別対応が多いため、職場で同僚とコミュニケーションを取る機会が少なく、孤立感を感じることがあります。また、自分の看護ケアが正しいのか、違う方法があるのかなど不安になることもあるそうです。その為にもチームミーティングや定期的な連絡を工夫する必要があります。
4. 資源の制約
訪問看護では、自宅の環境に合わせたケアを提供する必要があります。必要な医療機器や資源が不足する場合もあり、工夫が求められます。
将来展望
1. 高齢化社会による需要の増加
高齢化社会の進展に伴い、在宅医療や訪問看護の需要はますます増加しています。訪問看護ステーションの役割は重要性を増し、安定した雇用機会が期待されるはずです。しかし、国は訪問看護ステーションの大規模化を後押ししていますので、小規模事業者の生き残りは大変かと思います。
2. ICTの活用
情報通信技術 (ICT) の進展により、遠隔医療や電子カルテの活用が進んでいます。これにより、訪問看護師の負担軽減やケアの質向上が期待されます。DX化を推進しているステーションも多くなってきています。
3. 多職種連携の強化
訪問看護では、多職種連携が重要です。今後も、医師、薬剤師、リハビリスタッフ、社会福祉士などとの連携が強化され、包括的なケアが提供されることが求められます。
4. 専門性の向上
訪問看護師の専門性を高めるための教育や研修が充実し、認定訪問看護師などの資格取得が奨励されるでしょう。これにより、訪問看護の質がさらに向上します。訪問看護(在宅ケアに名称変更)、緩和ケア、皮膚・排泄ケア、がん性疼痛看護(緩和ケアに統合)、認知症看護などが役に立っています。
まとめ
訪問看護ステーションで働くことは、患者の自宅で個別化されたケアを提供する重要な役割を担う一方で、移動や緊急対応の負担などのデメリットもあります。しかし、今後の高齢化社会における需要の増加やICTの活用、多職種連携の強化などにより、訪問看護の重要性と働く環境はますます向上するでしょう。訪問看護ステーションでのキャリアを考える際には、これらのメリット・デメリットを理解し、自分に合った働き方を見つけることが大切です。
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