一般的な病院やクリニック、美容医療、在宅医療など、働く選択肢は数多くあるのが、医師、看護師の大きなメリットです。筆者のまわりにも様々な経験を積んだ看護師が現れますが、ごく最近だと健診センター出身の看護師という方が面接に来ました。そんなご縁もありましたので、健診センターで働くメリット、デメリットを考えてみます。
健診センターで働くメリット
働きやすい環境
健診センターは通常、病院の急性期病棟とは異なり、比較的安定した業務環境を提供しています。急患や重篤な患者に対する緊急対応がほぼ無く、医療行為や患者の対応と言った精神的な負担が少ない職場が特徴だと思います。また、夜勤や長時間のシフトが少なく、看護師として働いたとしても、規則正しい生活を送りやすくなります。生活と仕事のメリハリがつけやすい職場のひとつです。
予防医療の実践
健診センターでは、健康診断や予防接種など、予防医療に関わる業務が中心となります。これは、患者の健康を守り、疾病の早期発見や予防に貢献する役割を果たします。看護師は、健康教育や生活習慣の改善指導を通じて、患者の健康意識を高めることができます。健診センターでの看護となると、一般的な看護とはまた違った意味合いを持つことになります。
専門知識の深化
健診センターで働くことにより、予防医学、健康診断に関する専門知識を深めることができます。特定の検査や診断に特化したスキルを磨く機会も多く、看護師としてのキャリアの幅を広げることができます。心電図や血液検査の読み取り、CTやMRIの知識も身に着くかもしれません。最新の医療機器を目の当たりにすることも多くなると思います。また、メタボリックシンドロームの管理などの専門スキルが求められます。
患者との長期的な関係構築
健診センターでは、定期的に来院する患者が多いため、長期的な関係になっていきます。これにより、患者の健康状態の変化を継続的に観察し、看護師として適切なアドバイスを提供することができます。信頼関係を構築できるかは難しい事ですが、患者が健康に対して積極的になるよう促すアドバイスは出来るようになります。
ワークライフバランスの向上
私は、健診センターで働くメリットの一番大きなメリットはこのワークライフバランスだと思っています。最近では、サラリーマン健診のように少し遅く終了する医療機関もありますが、多くの場合は、通常の勤務時間内に業務が完結します。これにより、看護師はプライベートな時間を確保しやすくなり、家庭や趣味に充てる時間が増えます。結果として、仕事と私生活のバランスが取りやすく、長期的な職業生活においても健康を維持しやすくなります。育児や子育てにも適した職場だと考えています。
健診センターで働くデメリット
緊急対応スキルの低下
健診センターでは、急患や緊急事態に対応する機会が少ないため、看護師として緊急対応のスキルが低下します。これは可能性ではなく、確実に低下していきます。どうしても急性期病棟や救急部門で働く看護師に比べて、緊急事態への即応能力が劣るようになります。長期間、健診センターで勤務すると、これらのスキルが鈍り、急性期病棟や救急等で働こうとした場合、大きなリスクになり得ます。
キャリアの限界
予防医療に特化した環境で働くことは、専門性を高める一方で、キャリアの選択肢が制限される可能性があります。例えば、将来的に急性期病棟や専門科に戻りたいと考えた場合、経験不足が障害となることがあります。当院で働く看護師も非常に苦労しています。多様な臨床経験が求められるポジションに応募する際には、健診センターでの経験が評価されにくい場合もあります。
業務の単調さ
健診センターでの業務は、定期的な健康診断や予防接種など、ルーチンワークが多くを占めます。これは、業務が単調になりがちで、長期間続けるとモチベーションの低下につながる可能性があります。看護師としてのスキルアップや目標を失う場合もあります。看護師は、新しいチャレンジや学びを求めることが多いため、単調な業務が続くと職務満足度が低下することがあります。
患者との関わりの少なさ
健診センターでは、患者との接触時間が限られているため、深い人間関係を築く機会が少ないことがあります。これは、患者とのコミュニケーションが重要とされる看護師にとって、やりがいの減少につながることがあります。また、短時間で的確な健康指導を行うためのスキルが求められるため、限られた時間内で効果的なアプローチをする必要があります。
収入の制約
一般的に、健診センターの看護師の給与は、急性期病棟や専門病棟で働く看護師に比べて低い傾向にあります。これは、夜勤や休日勤務の手当が少ないためです。給与が重要なモチベーションの一つである場合、健診センターでの勤務は、収入面での満足感を得にくいかもしれません。
以下に、健診センターで働く看護師の給与例をいくつか挙げます(2023年時点の情報を基にした推定です)。
- 新卒看護師: 月給約20万円〜25万円、賞与年2回
- 経験5年未満の看護師: 月給約22万円〜28万円、賞与年2回
- 経験10年以上の看護師: 月給約25万円〜35万円、賞与年2回
- 管理職(主任や課長など): 月給約30万円〜40万円、賞与年2回
まとめ
看護師が健診センターで働くことには、多くのメリットとデメリットがあります。予防医療に貢献し、規則正しい生活を送りやすい環境で働ける一方で、緊急対応スキルの低下や業務の単調さといった課題もあります。個々の看護師のキャリア目標やライフスタイルに応じて、健診センターでの勤務が最適かどうかを慎重に検討することが重要です。