病院の中の透析センターや透析専門のクリニックなど、透析治療を行うクリニックは数多くあります。私がいる千葉も非常に多い専門科です。一般病棟や外来で働いてきた看護師としては、透析を知ってはいるものの、働く環境となると未知の領域ではないでしょうか?
多くの病院では、手術室同様に入口扉があって、その奥に機械が数多くある現場。機械音痴だという看護師には、非常に苦手な職場なように感じます。
一方で、臨床工学技士は、透析室勤務が大半という業種であり、学生時代の実習も透析センター実習が一般的だと思います。今回は、この両資格に関して、透析室で働くことを前提に様々な角度から考えてみたいと思います。
看護師目線で良い点とは?
専門性の向上
透析センターでは、腎臓病患者に対する専門的なケア、透析機器を使いこなす能力が求められます。糖尿病由来の患者も多く、看護師は腎臓病や人工透析に関する知識や技術を深めることができます。透析治療の管理や患者の教育、医療機器の取り扱いを通じて、高度な専門性を習得できます。
機械が苦手という方も多いとは思いますが、結局は慣れの問題になります。圧力などの勉強にもなりますので、非常に有意義で勉強できる場所だと思っています。
患者との継続的な関係構築
透析患者は週2~3回、定期的にセンターで治療するため、長期にわたる関係を築くことができます。これにより、患者の状態を継続的に観察し、個々のニーズに応じた看護とケアを提供することができます。長期的な関係は、良し悪しがありますが、慢性期医療を志す看護師であれば、非常に有意義な職域だと考えます。
安定した勤務時間
透析センターは多くの場合、定期的な診療時間が設定されており、夜勤や長時間のシフトが少ないです。早番と、朝が早い場合もありますが、看護師は規則正しい生活を送りやすくなります。週休2日制であれば、日曜日休みの他に1日休みがシフトで組まれます。土曜、祝日、正月やGWなどは、関係なく勤務です。しかし、日勤が主ですので、生活バランスは整います。
チーム医療の実践
透析センターでは、医師、臨床工学技士、臨床検査技師、栄養士など、さまざまな専門職と協力して患者のケアを行います。チーム医療の中で、自分の役割を理解し、他職種と連携するスキルを養うことができます。
看護師目線で気になる点
業務の単調さ
透析治療は定型的なプロセスで行われるため、業務が単調になることがあります。これにより、長期間続けるとモチベーションの低下につながる可能性があります。実際は、学ぶことはたくさんありますし、医療も年々進歩しています。看護も進歩しますので、自分次第というところはあります。
身体的負担
透析患者のケアには、患者の移動や機器の操作など、体力を要する作業が含まれます。長時間の立ち仕事や中腰、患者の介助など身体的な負担となることがあります。実際に現場では、腰痛が職業病とまで言われています。
緊急対応の必要性
導入期からエンドステージまで、多彩な患者を治療する現場です。また、体外循環を行いますので、血圧の変動も激しく、患者に大きな負担がかかる治療です。実際に、透析中に患者の状態が急変することも多々あり、看護師として迅速かつ的確な対応が求められます。ICLSの技術は勿論のこと、緊急事態に対応するスキルとストレス耐性が必要です。
臨床工学技士目線でのメリット
高度な技術の習得
透析センターで働くことで、透析装置の操作やメンテナンス、トラブルシューティングなど、専門的な技術を習得できます。単調と言われがちな職域ですが、様々な角度から勉強すれば、思っている以上に奥の深い職域です。また、穿刺なども技士が主体で行っているところも多く、高度な技術力を持つことで、職業的な市場価値が高まります。
安定した勤務環境
臨床工学技士もまた、規則正しい勤務時間のもとで働くことが多く、夜勤や長時間のシフトが少ないです。これにより、生活リズムを維持しやすくなります。若い人は、給料(手当)目当てで準夜勤帯が多い施設を好む傾向にあります。
チーム医療への貢献
臨床工学技士は、看護師や医師と連携して透析治療をサポートします。チームの一員として患者の治療に貢献することで、達成感や充実感を得ることができます。
透析は慢性期だけの治療ではなく、急性血液浄化につながるスキルでもあります。透析センターからICUや救急部門、手術室まで、臨床工学技士が駆け回って透析している施設も数多くあります。
臨床工学技士目線で対応が必要な点
技術の進歩に対応する必要
透析装置や治療技術は日々進化しています。最新の技術や機器に対応するために、継続的な学習と自己研鑽が求められます。製造メーカーでの研修なども行っていますので、積極的に参加することをお勧めします。
また、ダイアライザー等の性能などを技士が医師にアドバイスしている施設も多いと思います。そうなると、血液結果は読めて当然、医師の期待に応えられるよう勉強していかなければいけません。また、透析だけに限らず、心電図やCTやエコーなども勉強できる環境ですので、勉強は欠かせません。
機器トラブルのストレス
透析中に機器トラブルが発生すると、迅速な対応が求められます。このような状況は、ストレスとなることがあります。冷静かつ的確な判断力が必要です。
患者との直接的な関わりが少ない場合もある
臨床工学技士は、穿刺、機器管理、技術的なサポートが主な役割であり、看護師ほど患者との直接的なコミュニケーションが少ないことがあります。これにより、患者との人間関係を築く機会が限られることがあります。看護が出来ない分、穿刺の技術だけで判断される場合もありますので、非常に難しい職場でもあります。
平均給料
年間の収入は、看護師も臨床工学士もあまり変わりません。おおよそ約350万円から550万円程度が目安となります。経験年数や資格の有無によって異なります。
まとめ
看護師と臨床工学技士が透析センターで働くことには、それぞれの職種に特有のメリットとデメリットがあります。看護師は、専門性の向上や患者との継続的な関係構築が大きなメリットであり、臨床工学技士は高度な技術の習得と安定した勤務環境が魅力です。しかし、双方ともに業務の単調さや身体的負担、技術の進歩に対応する必要がある点がデメリットとして挙げられます。
給与に関しては、看護師も臨床工学技士も基本給や手当、賞与を含めた年間収入が350万円から550万円程度が一般的です。地域や経験年数、資格の有無によって変動するため、自身のキャリアプランやライフスタイルに合わせた選択が重要です。