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医療・介護・保育分野における職業紹介事業の現状と取り組み

認定マーク 転職情報
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人材不足が深刻化する医療・介護・保育分野において、厚生労働省は職業紹介事業の適正化と求人者保護のための様々な取り組みを進めています。

これらの背景には、医療・介護・保育分野における職業紹介事業の違法行為が多数確認されていることです。厚生労働省が昨年8月から今年5月にかけて全国1,152の有料職業紹介事業所を調査した結果、716事業所(約62.2%)で職業安定法などの法令違反が見つかっています。

調査は、令和5年6月に策定された「規制改革実施計画」に基づいて実施されたものです。医療・介護・保育の分野では、短期間で離職するケースが多く見られており、政府はその原因の一つに、転職勧奨や就職お祝い金といった不適切な行為があると考え、重点的な監督を行いました。

調査の目的は、求職者に対する過度な転職勧奨や金銭的インセンティブが、就職の判断に不当な影響を与えることを防ぐことにあります。実際に、面接時に電子ギフトカードを提供したり、知人紹介で旅行券を支給したりする例が確認されました。これらは一見すると親切な対応に見えますが、職業安定法の趣旨に反しており、求職者の冷静な判断を妨げる要因となっています。

令和3年4月からは、就職お祝い金の提供などによる求職勧奨は禁止されています。これは、求職者が金銭的なメリットではなく、職場の内容や環境を正しく理解して就職先を選べるようにするための措置です。しかし、調査では多くの事業者がこの禁止事項を無視し、求職者確保のために違法なインセンティブを提供していた実態が明らかになりました。

この背景には、医療・介護・保育分野で続く深刻な人手不足があります。事業者は何とかして求職者を集めようとし、法令違反に手を染めるケースが後を絶たないのです。その結果、求職者が金銭的インセンティブを理由に転職しても職場に適応できず、短期間で退職してしまうリスクが高まります。これにより、事業者は再度人材を確保しなければならず、業務の安定や効率にも悪影響が出ます。

厚生労働省は今後、法令違反の事業者に対して厳格な監督と罰則の強化を行う方針です。定期的な監査や違反時の再発防止策の徹底に加え、違反へのペナルティの明確化によって抑止力の強化を図るとみられます。

さらに、事業者向けにセミナーやガイドラインの配布など、法令遵守に関する啓発活動も推進される予定です。オンラインを通じた情報共有や違反事例の共有など、継続的な教育体制の整備も求められています。

求職者や求人者が安心して職業紹介サービスを利用できるよう、政府と民間が連携して透明性と信頼性のある環境を整備することが重要です。求人情報の詳細な開示や、定期的な評価とフィードバックの仕組みも、有効な対策として注目されています。

また、業界全体で法令遵守を促進する取り組みも必要です。業界団体や協会が中心となってキャンペーンを展開し、模範的な事業者を表彰する制度を導入することで、事業者間の意識改革を促すことが期待されています。

求職者に対しても、転職時に金銭的なメリットに惑わされず、長期的な視点でキャリアを考えることの重要性を伝える啓発が求められます。ガイドラインやカウンセリングによって、法令に関する知識や判断力を持つことができる環境を整えることが大切です。

医療・介護・保育という社会的に重要な分野において、健全で持続可能な労働市場を実現するためには、政府、事業者、求職者それぞれが責任を持ち、共に取り組むことが求められています。本記事では、これらの分野における職業紹介事業の現状と、厚生労働省が行う支援策について解説します。

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職業紹介事業の適正化と言いながらも根本的問題が改善されていない

読み進める前に、根本的な問題とは何かというと、「紹介料の上限規制が何も討論されていない」されていないということです。また、求職者(転職者)へ、医療機関や介護事業者から受け取る予定の金額が示されていないという点です。転職者でビジネスが成り立っていますので、転職者へ受け取る紹介手数料はしっかり示すべきです。

職業紹介事業における紹介料の上限は、現在は理論年収の50%までとなっています。この上限は、厚生労働大臣への届け出が必要であり、実際には、20~30%程度が相場です。

しかし、近年20%を提示してくる事業者は非常に少なく、大手でも30%近くになってきています。

医師の年収が1800万円を提示した場合、1800万円×0.3%で、540万円の手数料がかかるという計算になります。

エージェントとのやり取りで、メール数通、電話数回程度で紹介料が540万円、それも一括で振り込み約束となるわけです。これが、看護師であり、年収500万円を提示した場合は、500万円×0.3%=150万円です。これも一括振り込みです。

上記より、大きなお金が動く事が理解できると思います。紹介手数料が医療機関や介護事業者に重荷になる理由は、間違いなくこの金額なのです。

ですから、厚生労働省が規制しなければいけないことは、真っ先に紹介手数料の上限金額の見直しなのです。そして、受け取る金額を事前にしっかり示すべきです。いくら認定企業制度などを作っても、上限を大きく引き下げない、転職者が自分がいくらで取引されているのかわからないまま紹介手数料がブラックボックスであると、健全で持続可能な労働市場は確保出来ないという著者の意見です。

紹介手数料の上限は、職業別に分けて、医師のような高収入業種であっても200万円までと規制するべきです。看護師はなどは50万円まで、介護福祉士などは30万円なんかではどうでしょうか?こんな感じでとにかく上限金額を決めてくださいと私は言いたいです。

そして、紹介手数料の想定や確定の数字は、しっかりと転職者にわかるようにホームページや契約書に明記するべきではないでしょうか。著者としては、職業紹介事業の適正化は、このような紹介手数料の見直し、紹介手数料の開示が第一だと思っています。

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「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口の設置

令和5年2月1日より、全国の都道府県労働局に「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口が設置されました。この窓口は、職業紹介の条件等についてトラブルとなるケースが発生していることを受け、以下の目的で設置されました。

  • 医療・介護・保育分野の求人者が相談しやすい窓口を明確化
  • 寄せられた情報を基に、職業紹介事業者の手数料の明示義務違反等を把握
  • 法令違反等の相談があった場合、指導監督等必要な対応を実施

背景には、医療・介護・保育分野に従事する労働者を採用する際に、「職業紹介事業者に支払う手数料が高い」「転職勧奨により早期離職してしまう」といった指摘が寄せられていることがあります。

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職業紹介事業者の遵守事項

職業紹介事業者には、以下のような遵守事項が定められています。

  • 職業紹介手数料等の情報開示義務
  • 職業紹介手数料の返戻金制度の勧奨
  • 自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限る)に対して、就職後2年間の転職勧奨の禁止
  • 転職の勧奨につながるような求職者への「就職お祝い金」などの禁止
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集中的指導監督の実施

厚生労働省は、医療・介護・保育分野の職業紹介事業者に対して集中的な指導監督を実施しています。令和5年度中に全国の都道府県労働局において指導監督が行われました。

医療・介護・保育分野の職業紹介事業者に対する集中的指導監督厚生労働省集中的指導監督都道府県労働局実地指導・調査職業紹介事業者医療・介護・保育分野無期雇用紹介実績あり主な確認事項・手数料の明示義務・返戻金制度の明示義務・労働市場への情報開示義務・2年間の転職勧奨の禁止 等「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口トラブル等の情報収集

職業紹介事業者の遵守事項

医療・介護・保育分野における集中的指導監督の流れ(イメージ図)

指導監督の対象と確認事項

対象: 医療・介護・保育分野の無期雇用紹介実績がある有料職業紹介事業者

職業紹介事業者への主な確認事項:

  • 手数料の額・率、そこに含まれるサービスの内容に関する求人施設への明示義務
  • 返戻金制度を設けている場合は、その内容に関する求人施設への明示義務
  • 労働市場への情報開示義務(手数料率、6か月以内の離職状況、返戻金制度の有無・内容等)
  • 求人施設や求職者からの苦情に適切に対応するための体制の整備
  • その紹介により無期雇用就職した者に対する2年間の転職勧奨の禁止
  • お祝い金の提供禁止

また、求人者からは手数料、返戻金、お祝い金、退職勧奨等に関するトラブル等についての情報収集も実施されています。

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地域ブロック別の職種別平均手数料・分布、職種別離職率の公表

「規制改革実施計画」(令和5年6月16日閣議決定)を踏まえ、厚生労働省は令和5年11月に医療・介護・保育分野における「地域ブロック別の職種別平均手数料・分布、職種別離職率」をホームページにて公表しました。これは、職業安定法に基づき職業紹介事業者に提出を義務づけている「職業紹介事業報告」を活用したものです。

医療・介護・保育分野における職業紹介の流れ求職者職業紹介事業者手数料・サービス提供求人施設手数料厚労省指導・監督※医療・介護・保育分野では、適正な職業紹介の推進のため、特別相談窓口の設置や適正認定制度などの取組が行われています。

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適正な有料職業紹介事業者の認定制度

厚生労働省は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度を創設しました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20571.html)この制度は、法令遵守等の基準を満たす、適正な紹介事業者を認定して「見える化」を推進するものです。これにより、求人施設等がサービスの質や内容を予め把握した上で、適正な事業者を選択できるようになります。

認定基準

必須基準 基本基準
法令遵守など、必ず満たさなくてはならない基準

医療、介護、保育の各分野別に定められた16~18項目のすべてをクリアする必要があります

求職者や求人者に対してより良いサービスを提供するために満たすことが望ましい基準

各分野別に定められた11~13項目のうち概ね7割以上の項目をクリアする必要があります

必須基準の例:

  • 職種別に手数料を公表している
  • 早期離職時の返戻金制度を設けている
  • 求職者に「お祝い金」を支給していない
  • 自らの紹介により就職した者に対し、転職勧奨をしない
  • 求人者の意向に沿わない過度の営業を行わない
  • 要配慮個人情報は、本人の同意を得ないで取得していない
  • 都道府県労働局から職業紹介事業に関し、職業安定法に基づく是正指導を受けていない(過去に受けた是正指導は是正済みであること)

基本基準の例:

  • 求職者のキャリア、志向、希望の勤務時間や曜日・勤務場所等の制約を把握した上で、適した就業先の紹介を行っている
  • 求人者からの求人申し込みは、電話だけではなく、書面、FAX、メールで受け付けている
  • 手数料率を含むサービス提供条件は、求人者に充分説明し理解を得た上で、契約締結により事前合意している
  • 求人者の採用背景、経営方針・理念、組織・人員体制等についても求人者からの情報開示に基づき的確に把握し、求職者に伝えることによりマッチングの精度を高めている

認定事業者には認定マークが付与され、特設サイトで公表されます。令和5年6月時点で、49社が適正認定事業者として認定されています(医療分野38社、介護分野22社、保育分野13社)。

認定

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ハローワークにおける人材確保支援

医療・介護・保育分野等の人材確保を強化するため、主要なハローワークに「人材確保対策コーナー」が設置されています(全国115カ所に設置され、専任のスタッフを配置)。

ハローワークにおける人材確保対策コーナーの支援内容人材確保対策コーナー全国115カ所に設置求職者医療・介護・保育求人者医療・介護・保育担当者制によるきめ細かな職業相談・紹介求人条件の見直しや求人票の書き方コンサルティングマッチング機会の提供ツアー型面接会・就職面接会など令和4年度:約4.8万人が就職、イベント約5,100回開催

コーナーにおける支援内容

  • 求人者に対し、求職者のニーズを踏まえ、求人充足のための求人条件の見直しや求人票の書き方のコンサルティング
  • 求職者に対し、担当者制(マンツーマン方式)によるきめ細かな職業相談・職業紹介
  • 業界団体、関係機関等と連携した業界の魅力発信・求職者の掘り起こし、ツアー型面接会や就職面接会などのマッチング機会の提供

支援実績

人材確保対策コーナーを通じ、約4.8万人が就職しています(ハローワーク全体(3分野)では約17.5万人(令和4年度))。また、業界団体・自治体等と連携したセミナー、就職面接会、職場見学会を延べ約5,100回開催しています(令和4年度)。

取組事例

ツアー型面接会(看護)
看護師等を募集している病院での面接と施設見学をセットにし、ハローワーク職員が同行して実施

お仕事相談会(介護)
介護ロボットの展示・体験会と併せた就職相談会を県と連携して開催

保育セミナー(保育)
未経験・ブランクのある有資格者を対象に、保育施設の種類、保育所の一日の流れ等を説明するセミナーを開催

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規制改革実施計画における関連施策

令和5年6月16日に閣議決定された「規制改革実施計画」には、医療・介護・保育分野における人材確保の円滑化のための有料職業紹介事業等の制度の見直しについて、以下のような措置が盛り込まれています。

規制改革実施計画における医療・介護・保育分野の施策ロードマップ令和5年度令和6年度指針遵守の徹底・特別相談窓口の周知集中的指導監督の効果把握と所要の措置の検討紹介手数料等に関する統計データの公表(検討・結論)認定制度の更なる改善(検討・結論)結論を得次第速やかに措置人材確保対策コーナーを中心とした支援強化

ロードマップ

医療・介護・保育分野における規制改革実施計画のロードマップ(イメージ図)

  1. 3分野を扱う紹介事業者における指針の遵守の徹底(令和5年度措置)
  2. 集中的指導監督の効果の把握と必要に応じた所要の措置の検討(令和6年度検討)
  3. 3分野を扱う紹介事業者により就職した者の離職や紹介手数料に関する統計データの公表(令和5年度検討・結論)
  4. 「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の更なる改善(令和5年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)
  5. ハローワークの人材確保対策コーナーを中心とした支援強化(令和5年度措置)
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まとめ

医療・介護・保育分野における人材不足は、単なる労働力の問題ではなく、社会基盤の維持に関わる重要な課題です。厚生労働省は、法令違反の是正、適正な職業紹介制度の確立、人材定着支援、そしてICT活用による業務効率化といった多角的なアプローチで対応を進めています。

職業紹介の適正化では、違法な転職勧奨や金銭的インセンティブの提供を排除し、公正で透明性のあるマッチングを行うことが重視されています。認定制度の導入により、求職者と求人者が信頼できる紹介事業者を選びやすくなり、ミスマッチの減少と職場定着の促進が期待されます。

また、ハローワークなどの公的支援機関は、地域ごとの実情に応じた相談対応や職業紹介、イベント開催を通じて、実質的なマッチング機会を提供しています。これにより、単なる求人情報の掲示だけでなく、求職者との関係性を築きながら長期的な就業支援を行う体制が強化されています。

一方で、これらの対策を有効に機能させるためには、民間事業者の法令遵守に対する意識の底上げが欠かせません。業界団体や自治体との連携、表彰制度の導入、違反事例の可視化と共有などを通じて、自主的な改善の動きを加速させる必要があります。

さらに、求職者自身にも正しい情報に基づいた選択が求められます。金銭的インセンティブに左右されないキャリア選択の重要性を伝える啓発活動の充実、キャリアカウンセリングの支援体制整備など、情報リテラシー向上のための取り組みが求められます。

今後は、これらの施策が一過性の対応にとどまらず、制度として定着し、継続的に改善されていくことが重要です。健全で持続可能な労働市場の構築に向けて、行政、企業、求職者が三位一体で取り組む必要があります。