日本における外国人の増加は、少子高齢化と相まって、今後の医療に大きな影響を与えると考えられます。このトピックについては、多角的な視点から考察することが重要です。既に患者の多くが外国人というクリニックも存在しています。僕の出入りしているクリニックも多くの外国人が患者として訪れ始めています。訪問診療でも、同様で外国人家族というケースもありました。以下に、外国人増加と日本のこれからの医療について詳しく述べます。参考にしてください。
1. 外国人増加の背景
労働力不足の解消
少子高齢化により、日本の労働力は減少傾向にあります。この問題を解消するため、政府は外国人労働者の受け入れを拡大しています。特に介護や建設、農業などの分野で外国人労働者の需要が高まっています。
外国人労働者数は 2,048,675 人で前年比 225,950 人増加し、届出が義務化された平成19年以降、令和5年10月に過去最高を更新し、対前年増加率は 12.4 %と前年の 5.5 %から 6.9 ポイント上昇しています。外国人を雇用する事業所数は 318,775 所で前年比 19,985 所増加、届出義務化以降、過去最高を更新し、こちらも対前年増加率は 6.7 %と前年の 4.8 %から 1.9 ポイント上昇しています。
国籍別では、ベトナムが最も多く 518,364 人(外国人労働者数全体の25.3%)、次いで中国 397,918 人(同19.4%)、フィリピン 226,846 人(同11.1%)という順になっています。
国際化の進展
グローバル化の進展により、日本に在住する外国人の数は増加しています。留学生や技術者、観光客など、多様な背景を持つ外国人が日本に滞在しています。将来の少子化を見据えても外国人労働者が減ることはないと考えます。
また、円安の影響も大きく、日本にロングステイ先を構える外国人も増えているということです。インバウンドと円安の影響が大きく国際化を進展させていますので、海外旅行客も大幅に増加しています。日本では、このような旅行客の医療保険資格を持たない外国人も増加しています。
2. 医療ニーズの多様化
言語の壁
外国人患者の増加に伴い、言語の壁が大きな課題となります。医療現場では、適切なコミュニケーションが重要であり、言語の違いが医療提供に影響を与えることがあります。
実際には、外国人の受付を雇っているクリニックがあったり、職員が外国語を学んでいるところもあります。他には、スマホの翻訳機能や通訳を介してやり取りしているというのが実情です。
在住となると、簡単な日本語を話せる外国人もいますが、旅行客となると母国語のみという患者が大半だと思います。
文化的背景の違い
外国人患者は異なる文化的背景を持っており、医療に対する考え方や期待が異なる場合があります。例えば、治療方針や薬の処方に対する考え方が異なるため、医療提供者は文化的な違いを理解し、対応する必要があります。
例えば、アメリカ人の患者は、自らの健康管理に積極的であり、医療サービスの選択に関して自律性を持つことを重視します。インターネットや医療情報リソースを活用して、自分で情報を収集し、治療法を選択する傾向があります。
ヨーロッパの患者は、医療サービスに対して高い信頼を寄せており、公的保険制度の恩恵を受けています。また、患者の権利や情報提供の重要性が強調されており、患者のインフォームド・コンセントが重要視されます。
アメリカの患者は自律性を重視し、自分で医療情報を収集して選択する傾向があります。ヨーロッパの患者も同様に情報収集を行いますが、プライマリケア医の役割が大きく、医師のアドバイスを重視する傾向があります。
3. 医療提供体制の強化
通訳・翻訳サービスの充実
外国人患者に対して適切な医療を提供するためには、通訳や翻訳サービスの充実が必要です。病院や診療所において、多言語対応の通訳サービスを提供することが求められます。特に医療用語に関しては、専門の通訳でないと伝えるのが難しいこともあります。そのためにも、通訳できる職員の配置も今後早急な検討が必要だと考えます。
機械翻訳やリアルタイム翻訳アプリの活用も進んでいます。例えば、スマートフォンやタブレットを利用した翻訳アプリを使用して、医療従事者と患者がコミュニケーションを取るケースがあります。ただし、機械翻訳には限界があり、特に専門的な医療用語やニュアンスの伝達には慎重さが求められます。
筆者が勝手に想像していることとして、医療に特化した通訳専門家が誕生していくのではないか?と関心を寄せています。
医療スタッフの教育
医療スタッフには、異文化理解や多言語対応のトレーニングが必要です。外国人患者に対して適切な医療を提供するためには、文化的背景や医療に対する考え方の違いを理解することが重要です。
外国人患者が言語の壁を感じずに医療サービスを受けられることで、医療機関への信頼が向上します。患者が自分の症状や治療内容を正確に理解できると、治療への不安が軽減され、満足度が向上します。これにより、医療機関は外国人患者からの信頼を得ることができます。
これらのことを医療スタッフが理解し、実践していくことが大切となります。
多言語対応の医療情報提供
外国人患者が安心して医療を受けられるように、診療案内や薬の説明書、健康情報などの多言語対応が求められます。患者が治療内容を理解し、同意するためには、母国語での説明が不可欠です。インフォームド・コンセント(説明と同意)に対しては特に必要です。これにより、患者が医療に関する情報を正しく理解し、適切な判断を下すことができます。
多言語対応のパンフレットやサイン、問診票などを導入している医療機関も増えてきています。外国人患者が医療機関内での手続きや診察の流れを理解しやすくなります。また、ウェブサイトを多言語化することで、事前に情報を得ることができるようにする取り組みも進められています。
4. 外国人労働者の健康管理
健康診断と予防医療
外国人労働者に対して定期的な健康診断を実施することは、早期に健康問題を発見し、適切な対策を講じるために重要です。健康診断は、労働者の健康状態をモニタリングし、職場での健康リスクを評価するための基本的な手段です。
また、外国人労働者が母国で受けていない予防接種を提供することも重要です。インフルエンザやB型肝炎などの感染症の予防接種を受けることで、労働者の健康リスクを低減し、職場全体の健康を守ることができます。
健康保険制度の理解促進
外国人労働者に対して、日本の健康保険制度や医療サービスの利用方法を理解してもらうための教育が必要です。これにより、適切な医療サービスを受けることができ、健康管理がしやすくなります。
5. 地域社会との共生
地域医療ネットワークの構築
外国人労働者と地域医療ネットワークの関係性は、労働者が適切な医療サービスを受けるために非常に重要です。地域医療ネットワークは、多言語対応、文化的配慮、保険制度の案内などを通じて、外国人労働者の健康管理を支援しています。今後は、人材の育成や持続可能な支援体制の構築、テクノロジーの活用などを通じて、さらに効果的なサポートを提供することが求められます。これにより、外国人労働者が安心して働き、健康を維持できる環境を整えることが、日本社会全体の健康と福祉の向上につながるでしょう。
僕が知っている範囲で話すと、外国人労働者とごく一部の親切な日本人というネットワークもあります。しかし、いざという時に地域のネットワークよりもアクセスしやすい環境ということもあり、そのローカルで小さいネットワークの方が機能しているということもあります。彼らが躊躇せずにアクセスしやすいネットワークの構築が望まれます。
コミュニティの健康促進活動
地域コミュニティで健康促進活動を行い、外国人住民と日本人住民が共に健康を維持できる環境を作ります。例えば、健康セミナーやワークショップを開催し、健康情報を共有することで、地域全体の健康意識を高めます。
6. 政策と法整備
医療政策の見直し
日本には毎年多くの外国人旅行客が訪れますが、その中には医療保険に加入していない人々も多く含まれています。無保険の旅行客は、急病や事故などの緊急医療が必要になった場合、医療費の全額を自己負担しなければならない状況に直面します。
無保険の旅行客が医療を受ける際、高額な医療費が請求されることがあります。特に、緊急医療や入院が必要な場合、その費用は非常に高額になることがあります。また、外国人旅行客が医療費を支払えない場合、医療機関はその費用を回収できないリスクを負います。これにより、医療機関は財政的な負担を抱える可能性があります。
言語の違いにより、適切なコミュニケーションが難しく、診断や治療において誤解が生じることがあります。これにより、適切な医療提供が困難になることがあります。医療費を心配するあまり、旅行客が医療サービスの利用を控えることがあります。この結果、病状が悪化し、より深刻な医療問題を引き起こすことがあります。
上記、いずれにしてもグローバル化している日本での早急な課題です。医療機関で大きな問題が起きる前に指針程度は、国が主体で作ってくれても良い気がします。
7. テクノロジーの活用
テレメディシンの推進
遠隔医療(テレメディシン)を活用することで、言語の壁や地理的な制約を克服することができます。外国人患者が自宅から医師の診療を受けられるようにすることで、医療アクセスを向上させます。
AIと翻訳技術の導入
AIや翻訳技術を活用して、リアルタイムでの通訳サービスを提供することができます。医療現場でのコミュニケーションを円滑にし、患者と医療スタッフの間の誤解を減らすことが期待されます。
まとめ
外国人の増加に伴い、日本の医療は多様化し、新たな課題に直面しています。これに対応するためには、言語や文化の違いを理解し、多言語対応や異文化理解を推進することが重要です。また、医療提供体制の強化や地域社会との共生、政策や法整備の見直し、テクノロジーの活用など、多角的なアプローチが求められます。
転職サイトで、この記事を書いたのには意味があります。
もう、日本人だけ相手している医療機関は、衰退化していくと考えているからです。医療もグローバル化していくはずですので、個人的には、外国人労働者を受け入れている医療機関、今準備している医療機関などが、今後生き残っていきます。あなたの転職希望先がグローバル化しているか、するのかも選択の指標になりませんかね!