国立大学病院の17病院が赤字
5/10に国立大学病院長会議の定例記者会見が行われました。
R5年度の収支報告でしたが、全42病院中17の病院が赤字ということのようです。
物価高、コロナ支援金の打ち切り、人件費増加が原因とのことですが、正直に言えば、どの医療機関も同じ影響は受けます。民間は、ここまで酷い赤字になると、通常は倒産に至ります。国立だから許されるものの、民間では許されない経営状態です。民間だと、月次赤字でもかなり厳しい対応策が取られます。補助金に頼ったりできる環境も逆にうらやましい限りです。
確かに大学病院は、高度医療機器の導入や最先端医療、研究等に至る幅広く医療に尽力しているとは思います。しかしながら、経営が成り立たない状況で医療に尽力できるのかは、大きな疑問です。
R5年度まで、コロナ助成金などに依存していた状況が良く理解できます。また、上記の支出は、国立病院のみの話ではありません。全国津々浦々の病院が規模は違えど同じ支出を行っています。
こうなってくると基本的には財政状況の分析と見直しを行い、通常であれば効率化、削減、増収策などが徹底されます。経営陣の見直しも行われるのが通常です。しかし、大学病院ともなると、赤字が当たり前という考えの方もいますので、人を入れ替えない状況で、どこまで本気で立て直せるのかが大きな焦点ではないでしょうか。
一般的な病院での赤字立て直しは以下のプロセスになります。
財務状況の徹底的な分析
- コストの見直し: 固定費や変動費の詳細な分析を行い、削減可能なコストを特定します。例えば、医薬品や医療材料の仕入れ先の再交渉や、エネルギー消費の最適化などが該当します。
- 収入源の確認: 保険請求の適正化や、未収金の回収強化を図ります。また、サービスの価格設定が適正かどうかを確認します。
効率化の推進
- 業務プロセスの見直し: 業務フローを再評価し、無駄を省くことで効率を向上させます。電子カルテの導入や、業務のデジタル化を進めることも効果的です。
- スタッフの適正配置: 効率的な人員配置を行い、過剰な労働時間を削減します。パートタイムやアルバイトの利用を検討することもあります。事務機能の集約化、アウトソーシングなども積極的に行われます。
収入増加策
- 新規サービスの導入: 需要ある医療提供、健康管理を導入し、患者層の拡大を図ります。
- マーケティングの強化: 地域における医療機関の必要性や認知度を向上させるため、マーケティング戦略を見直します
経営体制の見直し
・ 経営戦略の方針転換:既存の経営戦略方針を変え、新たな戦略構想を企画する。
・ 経営陣の見直し:赤字体質の経営陣から、黒字を目指せる新たな経営陣へ入れ替えを行う。
赤字の病院に転職は危険か?
上記のように17の国立大学病院は、赤字であり、改善見込みが無さそうな状況です。これは、国立大学病院に限った話ではありません。民間でも、公立でも、赤字病院はあります。
特にコロナ禍の終焉により、補助金の打ち切り、また、電気代の値上げや物価高も追い打ちとなっています。補助金の打ち切りは、コロナ助成金で潤っていた病院にとっては、非常に大きなダメージだと考えます。
地方によっては、医師や看護師の人材不足により業務縮小などを行っているという情報もあります。また、今後は医師の働き方改革に伴い大学病院からの医師派遣の中止や人員削減も一定程度生じる可能性があり、宿日直許可を得ていない医療機関への派遣ストップも懸念されます。
医療経営の黒字経営は、そう簡単なものではないということです。
赤字病院のリスク
- 財務的安定性の欠如:
- 給与の遅延や削減の可能性があります。
- ボーナスや昇給が期待できない場合もあります。
- リストラや閉鎖のリスク:
- 経営状況が改善しなければ、リストラや病院の閉鎖のリスクが高まります。
- 業務負担の増加:
- コスト削減のために人員削減が行われると、一人当たりの業務負担が増える可能性があります。
- 資源の制約:
- 設備や医療資材の不足が発生し、質の高い医療提供が困難になることがあります。
赤字病院への就職は、上記のようなリスクはあります。
人材が適材適所に配置され、患者も一定数確保が出来る。外来から入院、そこから手術、一定期間での退院と包括医療並みのスケジュールと無駄を省かないとなかなか黒字にはたどり着きません。
特に主要になる医師や看護師は、経営の要となります。赤字病院程、人材に困り、ひとり当たりにかかる負担は大きなものとなります。負担と給料が見合わない可能性もあります。転職して残業が増えた、負担が大きいと嘆く前に、希望する医療機関の経営状況は知っておくべきではないでしょうか。
赤字病院への転職はリスクが伴いますが、場所によっては得られる経験やスキルも多く存在します。リスクを理解し、自身のキャリア目標や価値観に照らして慎重に判断することが重要です。また、転職前に病院の状況をできる限り詳しく調査し、信頼できる情報を基に決定を下すことが推奨されます。
全国国立大学病院長会議の詳細は下記のHPで確認してください。