看護師も技師(技士)においても、適切な知識と技術を持った専門家が患者の健康と安全を守ることは非常に重要です。しかし、近年、医療の様々な民間資格ビジネスが急増しており、これに便乗しないことの重要性が問われています。
もちろん、中には医療事務分野のように国家資格がなく、業務の取っ掛かりとして教育を受ける分には特に問題にはならないとは思います。しかしながら、国家資格を持った有資格者向けの民間資格は、あくまでも知識を増やす為のものであり、実際の臨床現場で国家資格の業務範囲を超えた手技が行えるものではないということは肝に銘じて頂きたいと思っています。また、優良な民間資格は、診療報酬に反映されやすい傾向にあります。転職やスキルアップに有効な資格を見極めて頂きたいと思います。
資格の信頼性と質の保証
国家資格と比較して、民間資格はその信頼性や質が保証されていないことが多いです。筆者も一時期、様々な民間資格を取得しましたが、今は全て更新せずに放置状態です。酷い民間資格、学会認定資格は、取得後にアフターフォローが全くないものもあります。そのような資格は、特に商的要素が高く、危険だと感じています。
国家資格は、厳格な試験や研修を経て取得されるものであり、その過程で必要な知識や技術が確実に身につけられます。一方、民間資格は発行する団体によって基準が大きく異なり、一貫性が欠ける場合があります。これにより、資格を取得したからといって、その人が必ずしも適切な知識や技術を持っているとは限りません。これは、経験上、学会認定の一部も含まれます。
患者の安全性の確保
医療分野で働く専門家には、高度な専門知識と技術が求められます。民間資格を取得することで得られる知識や技術が不十分な場合、患者の安全が脅かされる可能性があります。例えば、不適切な診療や治療を行った場合、患者に重大な健康被害をもたらすことがあります。医療従事者としての責任を果たすためには、信頼性の高い資格を持ち、適切な訓練を受けることが不可欠です。
民間資格ビジネスの商業主義
民間資格ビジネスは、利益を追求するあまり、質よりも量を重視する傾向があります。資格を発行するための講座や試験、教科書が高額であることが多く、受講者からの収益を目的としている場合があります。このようなビジネスモデルでは、受講者が本当に必要な知識や技術を習得できるかどうかは二の次になってしまうことがあります。これにより、受講者は高額な費用を支払っても、実際には役立たない資格を手に入れることになる可能性があります。
専門性の欠如
民間資格ビジネスの中には、短期間で資格を取得できるものが多く存在します。しかし、医療分野における専門性は一朝一夕に身につくものではありません。長期間の学習と実践を通じて初めて、専門的な知識と技術が身につきます。民間資格ビジネスが提供する短期間の講座やセミナーでは、こうした専門性を十分に養うことは困難です。
法的な問題
民間資格を取得しただけでは、法律的に認められた医療行為を行うことはできません。日本においては、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は、国家資格を持つことで初めて法的に認められた医療行為を行うことができます。民間資格を持つだけでは、こうした法的な権限を持たないため、医療行為を行うことができず、違法行為となる可能性があります。
求職者のミスマッチ防止
民間資格を取得した求職者が、実際の医療現場で働く際に求められるスキルや知識を持っていない場合、職場でのミスマッチが発生することがあります。これにより、雇用者側も求職者側も双方にとって不利益が生じます。適切な資格を持ち、実践的な訓練を受けた人材を採用することが、医療機関にとっても求職者にとっても重要です。
本来の目的を見失わないために
医療分野で働く専門家としての本来の目的は、患者の健康と安全を守ることです。民間資格ビジネスに便乗することで、この本来の目的を見失う危険性があります。質の高い医療を提供するためには、信頼性のある資格と適切な訓練が不可欠です。商業主義に惑わされず、本来の目的をしっかりと見据えることが重要です。
まとめ
医療の民間資格ビジネスに便乗しないことは、患者の安全性を守るため、医療従事者としての責任を果たすために非常に重要です。信頼性と質の保証、患者の安全性の確保、商業主義に陥らないこと、専門性の欠如を避けること、法的な問題の回避、求職者のミスマッチ防止、本来の目的を見失わないために、民間資格ビジネスに便乗することなく、信頼性のある資格と適切な訓練を受けることが求められます。質の高い医療を提供するために、医療従事者としての責任を果たし、患者の健康と安全を最優先に考えることが必要です。