三次救急医療とは、生命に関わる重篤な病気やけがに対応する医療体制を指し、通常、専門的な知識と高度な設備を備えた医療機関で提供されます。しかし、今後この三次救急が減少していく理由には、複数の要因が考えられます。以下に、それらの要因について詳述します。
1. 医療従事者の不足
三次救急医療を提供するには、高度な専門知識を持つ医師や看護師が必要です。しかし、これらの医療従事者の不足が深刻化しています。特に地方では、若い医師が都会に集中する傾向があり、地方の医療機関では人材確保が困難となっています。この結果、地方での三次救急の提供が難しくなり、減少する可能性があります。
医師や医療従事者は、教育機関や研修施設が集中する都市部でキャリアを積むことが一般的です。地方には大学病院や高度な医療施設が少ないため、専門医療の経験を積む機会が限られています。そのため、若い医師は都市部に留まり、地方での勤務を選ばない傾向があります。
また、医療機関の問題もあります。少ない人員で多くの業務をこなさなければならないため、労働環境が過酷です。長時間労働や過重労働が常態化し、医療従事者の負担が大きくなります。これが原因で地方での勤務を避ける医師が増えています。
そして、何よりも地方の医療機関は財政的に厳しい状況にあることが多く、都市部の医療機関に比べて給与や待遇が劣ることがあります。医師は経済的な理由から、より良い待遇を求めて都市部での勤務を選ぶことがあります。
2. 経済的制約
三次救急医療には多額の費用がかかります。高度な医療設備の維持や、24時間体制での人員配置には膨大なコストが伴います。経済的な制約が厳しい中で、病院経営が困難となり、三次救急を維持することが難しくなることが考えられます。特に、公的資金の投入が減少することで、三次救急の提供が困難になるケースが増えるでしょう。
3. 高齢化社会の進展
日本は急速な高齢化社会に突入しています。高齢者は慢性的な病気を抱えることが多く、急性期の対応よりも慢性期のケアが求められることが増えています。そのため、医療リソースが慢性期のケアにシフトし、三次救急に充てるリソースが不足する可能性があります。また、高齢者の増加により、医療全体の需要が増加し、三次救急に集中できるリソースが相対的に減少することも考えられます。
一時は三次救急が増加しましたが、今後の超高齢化社会がもたらす影響は、医療のシステムを大きく変えていきます。必要とされる医療従事者も救急医療よりも高齢者医療にシフトを始めています。
4. 地域医療の再編成
地域医療の再編成が進む中で、地域ごとの医療提供体制が見直されています。効率的な医療提供を目指すために、三次救急を集約し、特定の拠点病院で集中して対応する方針が取られることがあります。この結果、特定の地域では三次救急の提供が減少することが考えられます。
地方の大病院であっても合併統合などを行い、患者の集中化を図ろうとしています。今までは、近くにあった病院も統合によって遠くになったという声も聴くようになりました。経済面などを踏まえると致し方ない状況なのかもしれません。
5. 予防医療と一次・二次救急の強化
予防医療の推進や一次・二次救急の強化により、重篤な病気やけがの発生を抑えることができます。これにより、三次救急の需要自体が減少する可能性があります。健康管理の徹底や早期診断、早期治療が進むことで、三次救急に頼らずに済むケースが増えるでしょう。
6. 医療技術の進歩
医療技術の進歩により、病気やけがの治療方法が多様化し、従来は三次救急が必要だったケースでも、一次や二次救急で対応できるようになることが考えられます。たとえば、先端医療技術やロボット手術の導入により、重篤な症状でも迅速かつ的確な対応が可能となり、三次救急の必要性が相対的に低下することが予想されます。
7. 社会的要因
社会的要因も無視できません。例えば、都市部の過密化と地方の過疎化が進行する中で、三次救急の需要が都市部に集中する一方で、地方では提供が困難になるケースが増えています。また、ライフスタイルの変化により、病気やけがのパターンも変わってきています。これに伴い、三次救急の必要性も変化していくことが考えられます。
以上の要因を総合すると、三次救急医療の提供が今後減少していく理由は多岐にわたります。医療従事者の不足、経済的制約、高齢化社会の進展、地域医療の再編成、予防医療の推進、医療技術の進歩、そして社会的要因が複合的に影響し合うことで、三次救急の提供が難しくなる可能性が高まっています。このような状況に対応するためには、医療体制の見直しや効率的なリソース配分が求められます。また、社会全体で健康管理を徹底し、予防医療を推進することで、三次救急の必要性を減少させる取り組みも重要です。