中央社会保険医療協議会から示された最新の議論は、これまでの薬局経営のあり方を根本から覆すような内容を含んでいます。特に医療モール型薬局については、その高い収益性と運営の効率性がクローズアップされる一方で、地域医療への貢献度という観点から厳しい適正化のメスが入れられようとしています。これから2025年、そして2035年に向けて薬局業界がどのように再編されていくのか、膨大なデータに基づいた現状と課題、そして未来の生存戦略を詳細に解説していきます。
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政府が患者のための薬局ビジョンを公表してから約10年が経過しました。このビジョンの根幹は、薬局を立地から機能で評価する体系へとシフトさせることにあります。具体的には、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局とし、2035年までには立地そのものを門前から地域へと移行させるという壮大な計画です。
しかし、現実に目を向けると処方箋集中率が高い薬局、いわゆる門前薬局の割合はむしろ増加傾向にあります。2015年には処方箋集中率85パーセント以上の薬局の割合は32.5パーセントでしたが、2024年には39.3パーセントへと上昇しています。集中率95パーセント以上の薬局についても、14.0パーセントから17.3パーセントへと増加しています。このような状況下で、複数のクリニックからの処方箋を集中的に受け付ける医療モール型薬局は、ビジョンが目指す方向性とは逆行する立地に依存したモデルとして、議論の焦点となっています。
医療モール型薬局の圧倒的な収益構造
今回の審議で最も衝撃を与えたのは、薬局のタイプ別による損益状況の格差です。調剤報酬体系において、医療モール等の薬局が多く該当する調剤基本料2を算定する薬局は、損益率および損益差額が他の区分と比較して顕著に高いことが示されました。
令和6年度の調査によれば、病院敷地内薬局を対象とした特別調剤基本料Aを算定する薬局が改定後に損益マイナスへと転じている一方で、医療モール内の薬局は高い利益水準を維持し続けています。立地別の損益率データを見ても、医療モール内の薬局は診療所前や病院前を上回る数字を叩き出しており、さらに令和6年度改定後もその利益率は増加傾向にあります。
効率的なオペレーションの正体
この高収益を支えているのは、極めて効率的なオペレーションです。同一建物内に複数の医療機関が存在するため、薬局は集客のための営業努力を最小限に抑えつつ、大量の処方箋を安定的に確保できます。また、特定のクリニックの処方パターンに特化して備蓄医薬品を最適化できるため、不特定多数の処方箋に対応する面分業の薬局に比べて、在庫リスクや廃棄コストを大幅に低減できるアドバンテージがあります。
さらに、処方箋集中率が高い医療モール型などの薬局は、備蓄している医薬品品目数が少ないにもかかわらず、より高い点数の加算を算定している実態が明らかになりました。これは、地域全体の医薬品供給拠点として幅広い在庫を抱える負担を負わず、利益率の高い処方に特化して報酬を得るいいとこ取りの状態であると、厳しく批判されています。
不動産取引と報酬還流の透明性
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医療モール型薬局の議論において、避けて通れないのが賃料の問題です。医療経済実態調査の結果から、一部の効率性の高い薬局、特に医療機関と特別な関係を持つ敷地内薬局や医療モールでは、土地や建物の賃借料が他の薬局に比べて極めて高額である実態が浮き彫りになりました。
報酬還流への疑念
これは、薬局が稼いだ調剤報酬が、高い賃料という形で実質的に医療機関側やその関連会社へ還流しているのではないかという疑念を招いています。医療機関のオーナーが設定する高額な賃料を支払えるのは、それだけ立地による収益性が高いことの裏返しでもあります。しかし、このような構造は国民の保険料から成る医療費が、特定の経営者間での不透明な利益移転に使われているとみなされ、今後は不動産取引の実態に応じた基本料の減算や加算の剥奪といった、より踏み込んだ措置が検討されることになります。
小規模乱立が招く社会的コスト
都市部における医療モール型薬局の集中は、小規模な薬局の乱立を加速させています。1店舗あたりの薬剤師数が少ない薬局が乱立することで、地域全体の医療提供体制が非効率になっています。具体的には、卸業者による配送回数が増える一方で、1回あたりの配送数量は少なくなるため、流通全体に大きな負荷がかかっています。また、多数の薬局がそれぞれに医薬品の在庫を持つことで、過剰な流通在庫が発生しています。これは昨今の医薬品供給不安定な状況において、在庫の偏在を助長する要因となっており、社会的にも看過できない問題として捉えられています。
さらに、患者が薬局を近さや便利さのみで選ぶようになり、複数の医療機関にかかっている場合でも薬歴が一元化されにくいという弊害も生じています。過当競争の結果、特定の医療機関の処方箋を集中的に調剤する門前薬局が乱立し、薬剤師の質的低下やかかりつけ機能の脆弱化を招いている可能性が指摘されています。
対人業務への強制的なパラダイムシフト
今回の改定議論の大きな柱は、薬剤師の業務を対物中心から対人中心へと完全に切り替えることにあります。効率重視で患者をさばくスタイルが主流だった医療モール型薬局は、今まさにその存在意義を問われています。
調剤管理料の日数区分見直し
まず、調剤管理料の日数区分が見直しの対象となっています。現行の調剤管理料は、処方日数に応じて点数が上がる仕組みですが、これは薬学的分析や調剤設計といった対人業務を適切に評価する観点からは不合理であるとの指摘があります。今後は日数の長さに頼って点数を稼ぐモデルではなく、薬剤師がいかに専門性を発揮したかを一律に評価する方向へ議論が進んでいます。これは、長期処方を効率よくこなすことで収益を上げてきた大規模なモール型薬局にとっては、ビジネスモデルの崩壊を意味しかねません。
フォローアップの義務化と評価
次に、フォローアップの義務化と評価です。服薬指導後の患者への継続的なフォローアップにより、副作用の検出率が大幅に向上することがデータで証明されました。これまでは薬を渡して業務終了とするスタイルが一般的でしたが、今後は副作用の有無を確認し、その結果を医師にフィードバックする継続的な管理体制がない薬局は、地域医療の担い手として認められない時代になります。効率性を追求するあまり、手間のかかるフォローアップを疎かにしてきた薬局は、報酬体系から取り残されることになります。
かかりつけ薬剤師制度の健全化
さらに、かかりつけ薬剤師制度についても厳しいメスが入っています。一部の薬局チェーンでは、かかりつけ薬剤師の同意取得数にノルマを課している実態が報告されています。患者が望んで選ぶのではなく、薬局側の収益都合で同意を迫るような行為は、患者の信頼を損なうだけでなく、制度そのものの形骸化を招いています。今後は数ありきの評価ではなく、真に患者に寄り添った実績、特に複数の医療機関を受診している患者の服薬情報を一元管理できているかという質の部分が、薬局の価値を決める重要な指標となります。
地域支援体制加算と在宅業務の格差
地域医療への貢献度を評価する地域支援体制加算や在宅薬学総合体制加算についても、地域による届出状況の差が顕著になっています。特別区や政令指定都市の薬局に比べ、その他の地域や医療資源の少ない地域では、実績要件のハードルが高く、加算の算定が困難な傾向にあります。
在宅業務におけるマンパワーの差
特に在宅業務については、常勤薬剤師数が多い薬局ほど、夜間休日や高額薬剤、麻薬の調剤といった負荷の大きい処方に対応できているデータが出ています。医療モール型薬局は薬剤師のマンパワーを確保しやすい環境にありながら、自ビルの患者対応に特化しすぎて、地域の夜間対応や在宅訪問という公共的役割を十分に果たせていない事例が散見されます。今後は、規模のメリットを活かして、いかにモール外の地域ニーズに応えるかが加算取得の必須条件となっていくでしょう。
医療DXと専門性の追求
今後の薬局経営において、医療DXへの対応は避けて通れません。電子処方箋の普及やオンライン資格確認の導入により、重複投薬や相互作用の機械的な検出が可能になります。しかし、重要なのはシステムがアラートを出した後の薬剤師の判断です。
薬剤師による専門的判断
情報の集約はDXが進めますが、そこから疑義照会の要否を専門的に判断し、医師と協議して処方を最適化するのは薬剤師の役割です。重複投薬防止加算などの評価も、単なるチェックの手間ではなく、この専門的な薬学的判断への評価へと純化されていくでしょう。
また、高度薬学管理機能の強化も求められています。抗がん剤の副作用対応や、無菌調製が必要な注射薬への対応など、特定の診療科と連携した高度な専門性を発揮することが期待されています。15歳未満の小児に対する注射薬の調製においては、体重に応じた細かな投与量調整が必要ですが、現在の無菌製剤処理加算は6歳未満に限定されています。こうした実態に合わせ、より広範な小児患者への専門的対応を評価する議論も進んでいます。
2035年に向けた医療モール型薬局の生存戦略
中医協の議論が示す未来図は極めて明確です。それは、便利な立地にあるだけで利益を独占する薬局は、もはや公的な報酬制度で支えられる対象ではないというメッセージです。医療モール型薬局が2035年まで生き残り、地域社会から必要とされる存在であり続けるためには、いくつかの大きな変革が不可欠です。
価値提供の拡張と地域インフラ化
価値提供の範囲をモール外へと拡張することです。自ビルの処方箋を待つ受動的な姿勢を捨て、地域の在宅患者や他の小規模薬局との連携に積極的に参画しなければなりません。24時間対応の輪番制への貢献や、備蓄医薬品の共有体制の構築など、地域の医薬品供給インフラとしての責任を果たすことが求められます。
効率化で得たリソースを対人業務の質向上へ再投資することも必要です。IT化やAI導入によって調剤業務のスピードを上げるのは、より多くの時間を患者のフォローアップや残薬整理、ポリファーマシー対策に割くためでなければなりません。患者がどこの病院にかかっても、自分の服薬情報をすべて把握してくれているという一元管理の安心感を提供することこそが、モール型薬局の新たな付加価値となります。
経営の透明性と患者本位の姿勢
さらに、不適切な患者誘引を排し、透明性の高い経営を確立することが重要です。ポイント付与や配送料無料の過度な宣伝による患者の囲い込みは、医療保険制度の健全な運営を損なう行為として厳しく規制されます。立地の利便性に甘んじることなく、提供するサービスの質によって患者から選ばれる、本来の意味でのかかりつけ機能を磨き上げる必要があります。
結論として、今回の審議資料は医療モール型薬局にとって、まさに最後通牒とも言える厳しい内容でした。しかし、それは裏を返せば、これまでの物流拠点としての役割から、真の専門医療サービス業へと脱皮するための千載一遇のチャンスでもあります。
薬局は単に薬を渡す場所ではありません。患者の生活圏において、最良の薬物治療を継続的にサポートし、地域住民の健康を守る最後の砦でなければなりません。2025年の改定は、その適格性を問う最初の大きな関門となります。変化を恐れず、今すぐ自局の機能を地域貢献へと振り向ける抜本的な変革を開始しなければ、2035年のゴール地点にたどり着くことはできないでしょう。薬剤師一人ひとりが、自らの職能をどこで発揮するかではなく、誰のためにどのように発揮するかを真剣に問い直す時が来ています。
医療モール内薬局の処方箋集中率と基本料の適正化
医療モール内の薬局については、その処方箋集中率の算出方法自体も見直しの議論が進んでいます。現行の調剤基本料2では、特定の保険医療機関からの集中率が基準となっていますが、医療モールのように多数の医療機関が入居している場合、個々の診療科からの集中率は低く抑えられ、結果として高い点数の基本料を維持できてしまう不合理が指摘されています。
算出方法の適正化案
これに対し、同一建物内あるいは同一モール全体の集中率を合算して評価すべきという声が強まっています。さらに、高齢者施設など遠方の施設から意図的に処方箋をまとめて受け入れることで、見かけ上の集中率を下げ、より高い基本料を算定しようとする行為についても、適正化の観点から厳格なチェックが行われる方針です。
効率性と地域ニーズの不一致
また、集中率が高い薬局ほど備蓄医薬品の種類が少ない傾向にあることも、医薬品の安定供給という観点からは大きな課題です。特定の診療科の処方だけに特化した在庫管理は、薬局経営としては効率的ですが、地域住民が突発的に必要とする多種多様な処方への対応力を奪っています。今後の改定では、備蓄品目数の基準をさらに引き上げ、地域における医薬品提供拠点としての実効性を担保することが求められます。
対人業務の深化と評価の再定義
薬剤師の専門性をいかに報酬で評価するかという議論は、調剤管理料の新設から一歩進んだ段階に入っています。単に情報を収集して薬歴に記載するだけでなく、収集した情報をどう分析し、処方提案や患者への指導にどう繋げたかが問われています。
薬学的分析の価値
例えば、複数の病院から処方されている薬剤の相互作用を確認する際、システムによる自動チェックはあくまで補助手段にすぎません。患者の生活習慣や腎機能・肝機能などの身体状況、OTC医薬品や健康食品の服用状況までを含め、総合的に処方の妥当性を判断する高度な薬学的知見こそが、今後の評価の中心となります。
インフルエンザ等の急性疾患への対応
急性疾患に対する吸入薬指導なども、その一つです。現在は喘息やCOPDなどの慢性疾患が評価の対象ですが、インフルエンザ等の急性疾患における吸入薬指導も、感染対策のための個室整備や確実な吸入確認など、多大な労力を要しています。こうした実情を踏まえ、急性疾患であっても適切な薬学的管理指導が行われる場合には、その負担に見合った評価を検討する議論がなされています。
患者フォローアップの科学的根拠
服薬期間中のフォローアップがもたらす効果については、明確なデータが示されています。フォローアップを適切に実施している薬局では、患者が副作用の初期症状を自覚した際に迅速に対応できるため、重篤化を防ぐ確率が高まります。また、残薬の確認や服用順守の向上にも繋がっており、医療費全体の適正化にも寄与しています。
患者の満足度と安心感
患者アンケートの結果からも、フォローアップを受けた患者のほとんどがよかったと回答しており、その理由として症状や体調に問題ないことを確認してもらえて安心できたという声が圧倒的です。これは、薬局が単なる物販の場所ではなく、自身の健康状態を継続的に見守ってくれる医療機関であることを患者が認識し始めている証拠でもあります。
今後の評価体系の方向性
今後は、このフォローアップ業務を単なる加算の一つとしてではなく、薬剤師が果たすべき標準的な業務として位置づけ、その実施状況や質を基本料の評価に反映させる可能性もあります。利便性で選ばれるのではなく、安心感で選ばれる薬局への転換が、生き残りの絶対条件となります。
医療資源の少ない地域における薬局の役割
都市部での小規模乱立が問題となる一方で、地方や過疎地域といった医療資源の少ない地域では、薬局の存在そのものが地域医療の維持に直結しています。こうした地域では、経営の効率性だけを追求すれば薬局が撤退してしまい、住民が薬を受け取れない事態を招きかねません。
自治体開設診療所との連携
実際の事例として、自治体が運営する診療所の敷地内に薬局を誘致し、地域医療を守っているケースもあります。こうした特殊な事情がある場合には、通常の敷地内薬局のような一律の減算を適用せず、地域の実情に応じた柔軟な評価を行う必要性が議論されています。
地元薬剤師会との協力体制
医療資源が限られた地域では、一つの薬局ですべてをカバーするのは不可能です。地域の薬剤師会や地域包括支援センター、多職種との連携を深め、面で地域を支える体制が重要です。こうした地域貢献への取り組みは、都市部とは異なる基準で正当に評価されるべき論点として挙げられています。
調剤報酬の簡素化と患者へのわかりやすさ
診療報酬体系が複雑化していることも、大きな課題として指摘されています。患者から見て、自分が何のサービスに対していくら支払っているのかが不透明なままでは、かかりつけ機能への理解は得られません。
診療報酬体系の再構築
今後は、医療DXの推進とともに、患者をはじめとする関係者にとってわかりやすい簡素な報酬体系への見直しが求められています。不要な加算の整理や項目の統合が進む中で、本当に価値のある薬剤師業務に評価が集約されていく流れになるでしょう。
患者の主体的な選択を促すために
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【2026年改定】在宅医療が激変!訪問看護・歯科訪問・薬局の「同一建物」ルールと質的転換の全貌薬局を選ぶのは患者自身であるという原則に立ち返り、各薬局が提供する機能やサービスを可視化することが重要です。ポイント付与などの経済的誘引に頼るのではなく、質の高い医療サービスを提供し、その対価として適正な報酬を得る。この健全なサイクルを確立することが、今回の改定議論が目指す究極の目的と言えます。
2025年を目前に控え、薬局業界はまさに変革の真っ只中にあります。医療モール型薬局という一つのビジネスモデルが問い直されていることは、業界全体の構造改革の一部にすぎません。薬剤師が真の医療専門職として地域社会に根を張り、2035年に向けて新しい価値を創造できるか。その答えは、これからの個々の薬局の決断と行動にかかっています。


